2012年3月31日土曜日

ゼヴァリンその15:「診察3月26日」

血小板が正常値に戻ってきた。
IL-2R(可溶性インターロイキン2レセプター)は、先月のデータではあるが正常値。
問題はなさそうだと主治医。











わたしの方からは、近所の医者で高脂血症の薬を処方されているが、大丈夫かと質問。
薬品名はゼチーア。


一般名はエゼチミブ。
遺伝子解析でコレステロールの吸収に
関係する遺伝子を発見。
その働きを阻害する薬として開発された。
こうした分野にもハイテクノロジーが…





悪性リンパ種と高脂血症には大きな関係はないし、ゼチーアを飲むことも問題ないだろうと主治医。

「むしろ、悪性リンパ種が良くなっている時に、コレステロール値が上がることが多いんですよ」
とPCを操作して、わたしの過去データを見せてくれようとしたのだが、

「あ、ブルーさんの場合は去年の再発時にコレステロール値が上がってますね…」
なんとなく苦笑い的な雰囲気の中で、6月ごろにPETをやることを確認して診察終了。

実は、左の首の付け根に違和感があるのだが、これは黙っていた。
どうせ次のPETでわかることだし、奥さんも診察室にいたので、

あんまり言うと、酒を止められちゃいますよ!

コメントお礼

>tokomaさん

東京はようやく春らしくなってきました。
こういう季節になると、
「生きてりゃいいこともあるさ」って思うことが増えてきますね。

2012年3月25日日曜日

ゾンビという生き方。

今回もくだらない話。

テレビをちゃんと見ることがなくなった。
家ではだいたいテレビつけっぱなし状態なんだが、
実際見ていることが多いのは、膝の上に広げたノートPCの画面だ。
で、時々テレビが何やら刺激的な言葉や音を発すると、そっちの画面に注目する。

家族も同じような状態で、続きもののドラマなんて誰も見なくなった。
せっかく金を払ってケーブルテレビに加入しているのに、これではいかんと思い、
いろいろ探したすえにFoxチャンネル(無料)の「ウォーキング・デッド」という
ドラマシリーズを見つけた。
ゾンビものである。
ホラーが大好きなのだ。

話としては、アメリカ中の街がゾンビだらけになっちゃって、わずかに生き残った人間が
農場に集まって暮らし始めるという、まあそれだけのことなんだが、
ホラーというよりは、極限状態におちいった人々の心理ドラマみたいなものが中心になっている。

というわけで、毎週極限アメリカ人の心理ドラマを見るはめになる。
仲間同士で言い争い、殴りあい、銃やナイフを突きつけて怒鳴りちらし、
他の生き残り集団と戦闘開始。
別にたいしたことでもないのに、みんなでエキサイトし放題。
アメリカ人は、こういう内容にリアリティを感じるくらい
エキサイティングな生活を每日やってんのか?

何回か見ているうちに、「こんなんだったらゾンビのほうがマシじゃないか?」と
思うようになってきた。

病気のことなんか気にする必要もないし(そもそも死んでるし)、
「あーまた月曜から会社かよ」と憂鬱になることもない。
每日ふらふら街を散歩して、腹が空いたら人間を見つけてむしゃむしゃ食う。
人よりいい暮らしとか、社会的地位がどうのこうのなんて考えることもない。
しかも番組内のゾンビは、互いに争うこともなく、人間よりもよっぽど平和的にふらふらしている。

もしかすると「ウォーキング・デッド」の作者は、そういうゾンビ的な生き方が
本当の人間らしさという深いテーマを、視聴者に訴えたいんじゃないかと思ってしまうくらいだ。
ま、違うだろうが。

そういうわけで
いま「あなたが目指す人間像は?」 なんて質問されたら、
↓「これです」と答えてしまいそうだ。人間とはちょっと違うけど。




これはこれで
平穏な日々
















でも、わたしの場合、ゾンビ化した 15分後くらいに人間に頭を撃たれて
一巻の終わりになりそうな気がしますよ。

コメントお礼

>tokomaさん

今はまだずっと先みたいな気分でいますが、
もし治療の道がなくなったら、どういう気持ちになるだろうかとか、
何をしようと思うんだろうかと、考えることはあります。
そういう時は、tokomaさんの友だちのホームページをもう一度見たりします。
でも、自分はどうなるかわからない。
死ぬまでこのブログを続けると何かわかるかもしれないので、やってみようと思ってます。
(すぐ死んじゃったりして)

2012年3月20日火曜日

コメントお礼

まりさん、レルさん、コメント書き込みが反映されずすみません。
わたしが使っているブログは、書き込みが何らかの条件にはまると、
スパム扱いして表示しなくなってしまうんです。
その条件がよくわからなくて、どうしたものかと思っています。
以前tokomaさんにも同じご迷惑をおかけしたということで、

>tokomaさん
震災1周年の11日に思ったんですが、
自分は震災に会わないで助かったと思うのは大間違いで、
また地球がちょっと暴れたら、一瞬で殺られちゃうんだと改めて感じました。
どうぞ静かにしていてくださいと地球にお願いしても、聞いてくれなさそうなので…
…こうなったら酒飲むかと。

>まりさん
医者ではないので、なんとも言えません。
ただ、まりさんの場合かなり長期間の寛解の可能性があって、
主治医はゼヴァリンや放射線をすすめているのかもしれません。
そのへんはどうなんでしょうか?

はっきりしない場合は、
「この治療をすると長期の寛解が期待できるんですよね?」
的なことを主治医に聞いてみたほうがいいです。
医者は、あまり甘いことは言えない立場と思いますが、
意見は言ってくれるはずなので。


>マツモトさん
「がんの補完代替医療を科学する」のサイトを見ました。
こんなにフラットに書かれているサイトがあるのに、
多くの人が「これってどうなの?」的な療法に頼るのは、
やはり固形癌の患者が大多数だからではないでしょうか。
手術は適応外、放射線もだめと言われ、
抗癌剤もはっきり効かないとなると、
何かに頼らないと精神的に参ってしまうんじゃないかと。
自分がそういう立場になったらと思うことがありますが、
どう考えてもヤケクソに…。

>レルさん
高コレステロールや貧血の影響なのか、
最近心臓がばくばくして心周期15億回のリミットに
近づいてる感じです。
時々寝ているときに心臓がドックンとなって
「リンパ腫じゃなくて心臓で死んだらたまらん!」と
飛び起きることがあります。
でもしばらくすると「ま、そっちの方がいいか」と思って
安眠したりするんですが。

「免疫力アップ」って何なんだ? その2(エピジェネティクスの逆襲)

だいぶ間があいてしまったが、前回の続き。

大笑いしながらキノコやコンブを食って「免疫力アップ!」したところで、
がんが「治る」なんて怪しいんじゃないの?
というところまで書いた。

その理由として、がん細胞が持っている複雑で精巧な免疫回避メカニズムをあげたわけだが、
じゃあ何でそんなにすごいメカニズムをがん細胞が身につけているんだろうか?

がん細胞は、遺伝子の異常によって細胞が変異を起こして生まれる、
というところまでは間違いないだろう。
でも、単純な突然変異みたいなものだったら、こんな複雑なメカニズムを装備できる確率なんて
ものすごく低いんじゃないのかと思って調べてみたわけだ。
そうしたら「エピジェネティクス」という言葉にぶち当たった。

エピは「上」とか「超」という意味の接頭語で、ジェネティクスは「遺伝学」とか「遺伝」だから、
エピジェネティクスは「超遺伝」ということになる。
じゃあそれは何なのかと言うと、人の生命活動は遺伝子のDNA配列だけで
コントロールされていると思っていたら大間違いで、
ある種のスイッチみたいなものが、遺伝子の一部分だけを停止させたり、
逆に一部分だけを動かしたりと、「DNA配列を無視した遺伝」が、
体の中でたくさん起きているということなんだそうだ。

書いているうちにわからなくなってきちゃうので、
↓こちらを見てほしい。
http://mui-therapy.org/newfinding/epigenetics.html  (ニューズウイーク誌)

なんだか非常に難しいエピジェネティクスだが、目で見てわかる実例もある。
下の写真はネコのクローンと、その元になったネコである。
つまり、遺伝子のDNA配列はまったく同じネコなのに、こうなっちゃったのだ。




左が元のネコ。
右がそのクローン。
(顔はよく似て
いるようだが…)






2匹は完全に同じDNAを持っているのに、毛並みが違う。
これはたぶん、クローン卵子を作成した時の環境とか、代理の母親の体内環境とか、
そのほか偶然みたいなことが重なって、エピジェネティクス的に
別の毛並み遺伝子のスイッチが押されてしまったということらしい。

エピジェネティクスは動物のいろいろな生命活動に関わっていて、
がんの発生にも重要な影響を与えているそうなんだが、
そもそも遺伝子の一部分だけをオン・オフするスイッチを誰(というか何)が
コントロールしているかは、よくわかっていないらしい。
ただ、エピジェネティクスに関係する物質については、いくつか明らかになってきているので、
この分野のがん治療薬はどんどん開発されるんじゃないだろうか。
 
またエピジェネティクスは環境によって大きな影響を受けるようで、
食べ物とか、化学物質とか、精神状態によっても影響される可能性があるといわれる。

ということで、話しは元に戻るが、

大笑いしながらキノコやコンブを食って「免疫力アップ!」でがんは治せないとは思うが、
エピジェネティクス的に体に影響を与えて、がんが治る可能性は否定できないのだ。

まあ、今のところ何がエピジェネティクスに影響を与えるのかはわからないわけで、
大笑いしながらキノコやコンブを食っても効果ゼロだが、
サウナの中で踊りながらヨーグルトと玄米を食ったら効果抜群!!
なんてことだってあるかもしれない。
ないとは思うが。

いまの科学レベルだと、エピジェネティクスは偶然としかいえない要素がいっぱいなわけで、
食べ物なんかでそれに影響を与えようとしても、
やっぱり偶然に期待するしかないんじゃないだろうか?



エピジェネティクス的効果を狙って毎日チョコレートを食っていたら、
コレステロールが高くなりすぎて医者に止められちゃいましたよ。

2012年3月5日月曜日

「免疫力アップ」って何なんだ?

さて、わたしの体の中に今もいるであろう濾胞性リンパ腫の野郎を何とかするために、
奥さんもネットなどを駆使していろいろ調べてくれている。
主に奥さんが調べているのは「免疫療法」といわれるやつで、
NK細胞や樹状細胞を体外で増やして、それをもう一度注射で体内に戻し、
免疫力でがん細胞を叩くという考え方のものらしい。
「そんな療法がほんとに効くなら、とっくにノーベル賞とかとってるよ」
と冷めた感想をいうと、「せっかく調べてやったのに!」と奥さんはむくれる。
まあ、ほのぼのとした夫婦の会話ではある。

そういった治療法紹介サイト以外にも、「免疫力アップでがんと戦う!」みたいな
サイトがやたらたくさんある。
笑ってNK細胞活性化とか、体温上げて免疫力アップとか、
キノコ食えとかコンブ食えとか、ビタミンCを注射しろとか―
がん予防というのならまだ許せるが、「がんを治す」までかたっているサイトもある。
いい加減なこといってんじゃねえ!と思うわけである。(これは個人の感想です)

そもそも、がん細胞は免疫システムを逃れるすべを身につけたからこそ
がん細胞になり得たんじゃないのか?
と思って調べてみると、やはりがん細胞の免疫回避メカニズムは、2重3重に張り巡らされた
精巧なもので、「免疫力アップ」なんて単純なことでどうにかなるなんてとても思えない。
だいたい「アップ」ってどういうことなのか?
具体的に説明しているサイトがなくてさっぱりわからない。

そのがん細胞の免疫回避メカニズムだが、わたしがわかるレベルの資料はほとんどなく、
無理やり読むと頭が爆発しそうになった。
なんとか理解できたのは、免疫療法の研究者が書いた↓これ。

「がんの免疫療法を阻んでいる要因の一つとして、がん細胞が免疫監視を回避
する機構(免疫回避機構)を持っている点を挙げることができます。がん細胞
は、がん抗原やそれをリンパ球に対して提示する HLA(組織適合抗原)を消失さ
せたり、免疫抑制物質を産生したり、免疫を抑制するリンパ球を誘導すること
が知られています。将来これらをうまくコントロールできれば、がんに対する
治療効果を一段と高められる可能性があります。しかし、がん細胞による様々
な免疫回避機構を考えると、免疫療法だけでがん細胞を排除しようとするより
もいくつかの異なる方法を組み合わせた治療(集学的治療)の一つとして、免
疫療法を確立していく方がよいかもしれません。」

免疫療法でさえも、がん細胞の免疫回避メカニズムに苦労しているのに、
笑いながらキノコやコンブを食ったくらいで、いったい何になるのかと?
という結論になるはずだったんだが、
さらに調べていくうちに、話しは意外な方向に…

この項つづきますよ。