2011年12月4日日曜日

サリドマイドの数奇な運命。

レナリドミドという薬が気になっている。
以前の投稿では「レナリドマイド」と表記したが、レナリドミドの方が一般的のようだ。
商品名は、レブラミド(レブリミドということもあり)。

レナリドミドは、「サリドマイド」の誘導体である。誘導体というのは、
「母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物」
ということで、素人的な感覚でいうと、親子の間柄の薬と思える。

サリドマイドという名前は、わたしくらいの年代の人間は
誰でも知っているんじゃないだろうか?
それも、とんでもなく悪いクスリというイメージで。

サリドマイドについてウィキペディアを見ると、↓こんなことが書かれている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%89

サリドマイドは、もともと抗てんかん薬として開発されたが、たいして効果はなかった。
その代わりに催眠性が認められたため、睡眠薬として発売された。
それまでの睡眠薬とくらべ、サリドマイドは効果がはやく、毒性もないということで、
処方箋のいらない睡眠薬として大人気になったそうだ。
アメリカでは、子供を寝かしつけるために使われたというし、
日本でも、「自然な眠りを誘うイソミン・イソミン・イソミン・イソミン」なんていう
テレビコマーシャルが流れていたという。

そんなわけで気楽に飲まれていたサリドマイドだが、
妊婦が飲むと四肢の発育不全の赤ん坊、いわゆるサリドマイド児が生まれ、大問題となった。
日本での被害者は300名以上、全世界での被害者は、およそ5800人とされている。
「薬害」のおそろしさを、初めて日本の人々に印象づけた薬だったと思う。

こんなことが起きると、薬としての運命は終わるはずなのだが、
1960年代、ハンセン病の皮膚症状に、サリドマイドが効果があることがわかった。
さらに、がん患者の体力消耗や食欲不振の原因である腫瘍壊死因子α(TN-)の
阻害作用が発見された。また、「血管新生阻害作用」もあることもわかってきた。
つまり、いろいろな可能性を持った薬であることが再認識されてきたのだ。
詳しいことは、ウィキペディアを見てほしい。
 
で、ここからが本題なのだが、
1998年、米国でサリドマイドが多発性骨髄腫の治療に有効であることが、はじめて報告された 
その後も有効性の報告が、国内外から数多く発表され、
2008年に多発性骨髄腫の治療薬として製造承認をうけた。

そして、サリドマイドの副作用を少なくし、効果を高めることをねらって開発された誘導体
レナリドミドが登場した。
いまレナリドミドは多発性骨髄腫だけでなく、MDS(骨髄異形成症候群)の
治療薬としても使われている。

多発性骨髄腫もMDSも、大きくいえば血液のがんだが、かなりかけ離れた病気なので、
ずいぶん守備範囲が広い薬があるもんだと思っていたら、
なんと、形質転換した濾胞性リンパ腫にも効果が期待されるというのだ。
 ↓ (1年前の情報だが)
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/cancer_reference/index.php?page=article&storyid=865

これはすごいなと思っていたら、今年に入って再発・難治性マントル細胞リンパ腫
対しても治験で効果を上げているという報告があった。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/icml2011/201106/520275.html 

守備範囲が広いだけでなく、悪性度の高い病状にも効果を上げているということで、
これは今までにない作用メカニズムがあるのではないかと思って調べてみた。


















図を見てもよくわからなかったのだが、実際いまのところは「色々な作用が総合的に効いている?」くらいしかわかっていないようだ。
どのポイントがいちばん効いているのか明らかになれば、
サリドマイド系の薬はさらに進化をするのではないだろうか?

形質転換をした濾胞性リンパ腫の場合、
リツキサンをはじめ既存の抗がん剤治療が効かなくなり、
移植まで持っていけないケースもある。
レナリドミドといったサリドマイド系の薬が、そうした状況を変える可能性があるかもしれない。

「悪魔の薬」なんて言われていたのに、ひょっとするとお世話になるかもしれないなんて、
不思議な気持ちになる。

しかし、レナリドミド、レナリドマイド、レブラミド、レブリミドと呼び方が多すぎて、

調べるのがたいへんだ。
はっきりしてくださいよ!

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