大笑いしながらキノコやコンブを食って「免疫力アップ!」したところで、
がんが「治る」なんて怪しいんじゃないの?
というところまで書いた。
その理由として、がん細胞が持っている複雑で精巧な免疫回避メカニズムをあげたわけだが、
じゃあ何でそんなにすごいメカニズムをがん細胞が身につけているんだろうか?
がん細胞は、遺伝子の異常によって細胞が変異を起こして生まれる、
というところまでは間違いないだろう。
でも、単純な突然変異みたいなものだったら、こんな複雑なメカニズムを装備できる確率なんて
ものすごく低いんじゃないのかと思って調べてみたわけだ。
そうしたら「エピジェネティクス」という言葉にぶち当たった。
エピは「上」とか「超」という意味の接頭語で、ジェネティクスは「遺伝学」とか「遺伝」だから、
エピジェネティクスは「超遺伝」ということになる。
じゃあそれは何なのかと言うと、人の生命活動は遺伝子のDNA配列だけで
コントロールされていると思っていたら大間違いで、
ある種のスイッチみたいなものが、遺伝子の一部分だけを停止させたり、
逆に一部分だけを動かしたりと、「DNA配列を無視した遺伝」が、
体の中でたくさん起きているということなんだそうだ。
書いているうちにわからなくなってきちゃうので、
↓こちらを見てほしい。
http://mui-therapy.org/newfinding/epigenetics.html (ニューズウイーク誌)
なんだか非常に難しいエピジェネティクスだが、目で見てわかる実例もある。
下の写真はネコのクローンと、その元になったネコである。
つまり、遺伝子のDNA配列はまったく同じネコなのに、こうなっちゃったのだ。
左が元のネコ。
右がそのクローン。
(顔はよく似て
いるようだが…)
2匹は完全に同じDNAを持っているのに、毛並みが違う。
これはたぶん、クローン卵子を作成した時の環境とか、代理の母親の体内環境とか、
そのほか偶然みたいなことが重なって、エピジェネティクス的に
別の毛並み遺伝子のスイッチが押されてしまったということらしい。
エピジェネティクスは動物のいろいろな生命活動に関わっていて、
がんの発生にも重要な影響を与えているそうなんだが、
そもそも遺伝子の一部分だけをオン・オフするスイッチを誰(というか何)が
コントロールしているかは、よくわかっていないらしい。
ただ、エピジェネティクスに関係する物質については、いくつか明らかになってきているので、
この分野のがん治療薬はどんどん開発されるんじゃないだろうか。
またエピジェネティクスは環境によって大きな影響を受けるようで、
食べ物とか、化学物質とか、精神状態によっても影響される可能性があるといわれる。
ということで、話しは元に戻るが、
大笑いしながらキノコやコンブを食って「免疫力アップ!」でがんは治せないとは思うが、
エピジェネティクス的に体に影響を与えて、がんが治る可能性は否定できないのだ。
まあ、今のところ何がエピジェネティクスに影響を与えるのかはわからないわけで、
大笑いしながらキノコやコンブを食っても効果ゼロだが、
サウナの中で踊りながらヨーグルトと玄米を食ったら効果抜群!!
なんてことだってあるかもしれない。
ないとは思うが。
いまの科学レベルだと、エピジェネティクスは偶然としかいえない要素がいっぱいなわけで、
食べ物なんかでそれに影響を与えようとしても、
やっぱり偶然に期待するしかないんじゃないだろうか?
エピジェネティクス的効果を狙って毎日チョコレートを食っていたら、
コレステロールが高くなりすぎて医者に止められちゃいましたよ。
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