2012年5月1日火曜日

我々は灰色の中に住んでいる(後編)。

前回は、「予後の悪いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」という部分がツボだったとか、
思わせぶりな終わりかたをしてみたわけだが、立派な結末はあるのか?
ま、いってみよう。

2008年6月、整形外科の診察室で「たぶん悪性リンパ腫だろう」といわれた後、
わたしは悪性リンパ腫のことが書かれたサイトやブログを見まくった。
まだ自分がどのタイプのリンパ腫だかわからなかったから、
とりあえず悪性リンパ腫と書いてあるものならなんでも見たわけだ。

悪性リンパ腫を総合的に説明してくれるサイトを見ると、
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、最も多くの日本人がかかるリンパ腫で、
30%以上がこのタイプだと書いてあった。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は抗癌剤に反応しやすく、
化学療法で治癒する場合があるとも書かれていた。

さらに、「最近はリツキサンがあらわれて、もうばっちり!」 的な期待感を煽っていた。
(正確に言うと、都合のいい部分だけ読んでそう思った)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんのブログも読んだ。
R-CHOP8クール(当時は8回が多かった)で、多くの人が寛解して再発しないので、
長続きしないブログが多いように思えた。

「じゃあ、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫希望!」なんて、図々しいことを考えた。
結果は濾胞性リンパ腫だったわけだが…。

しかし、その後ブログを見つづけていると、一部のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の
患者さんであれっと思うほど病気の進行が速い人がいることに気がついた。
もちろん、がんという病気は人それぞれということはわかるが、
その病状は形質転換した濾胞性リンパ腫に近いように感じたのである。

なので、びまん性大細胞型と診断された患者さんの中には、
けっこう濾胞性から形質転換した人たちがいるんじゃないかと思っていた。
それを医師が見逃しているか、あるいはわかっていても治療的にはびまん性大細胞型と
同じだから、患者にはそう伝えているんじゃないかと。

 ところが、前編にリンクした記事を読んで、ようやく疑問が解けたのだ。

「一般的なリンパ腫治療に期待される標的薬」http://www.cancerit.jp/16698.html (再掲)

上の記事には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と呼ばる病気には、
3つのサブタイプがあると書かれている。

記事に多少調べたことを加えると、
いちばん多いのはGCB(germinal center B-cell )というタイプで、
これがわたしの思っていたびまん性大細胞型で、比較的予後が良いもの。
逆にABC(activated B-cell:活性化B 細胞型)と呼ばれるタイプは予後不良で、
その中でも9p21のゲノム欠損がある場合はきわめて予後不良なのだそうだ。
濾胞性の形質転換型と思っていたは、ABCタイプだったのだろう。

GCB、ABC、そしてもうひとつのType3は独立したタイプというより、
それぞれの境界は不明確で、連続しているといわれている。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はグラデーションのようなもので、
患者はその中のどこかにいるってことになる。






隣の芝生は青いと思っていたら、けっきょく灰色だったということだ。

ということで、やっぱり悪性リンパ腫は人それぞれという、
そんなの当たり前だ的な結論になってしまう。
おまえの知ったかぶりに付きあって、時間を損したぜこの野郎と思うかもしれない。

でも、悪性リンパ腫というか、がんという病気のほとんどは
白から黒に変わるグラデーションのどこかの灰色で、
その灰色のどの部分にいるのか、自分にはわからないってことを、
ずっと意識し続けるのは、けっこう難しいんじゃないかと思う。

特に濾胞性リンパ腫は、時間の経過によって灰色の色が変わる。
ある日、灰色が異様に暗くなってきたとき、
その中をちゃんとひとりで歩いていけるんだろうか?






今回は最初にかっこいいタイトルを考えついたのはいいけれど、
途中で結論がわかんなくなって、すごい適当に辻褄をあわせてますよ。

1 件のコメント:

マツモト さんのコメント...

あーー、なるほどです。
白に近い方に住んでいたいですが、自分ではどこに存在しているのか分かりませんね。びまん性GCB希望ということで・・・お願いしたい。
ちなみに、どの型かの判定は遺伝子検査なのでしょうか? 一般にその検査はやってないですよね。ちょっと興味から自分の型が知りたいなぁ・・・なんて思ったりして(笑)